生没年不詳。

大伴安麻呂の娘で、大伴家持の父大伴旅人の異母妹。

大伴家持の叔母で、姑に当たる。

長女の大伴坂上大嬢も歌人で、家持と結婚した。

次女の大伴坂上二嬢は、大伴駿河麻呂と結婚した。

「万葉集」の代表的女流歌人の一人で、

女流歌人の中では、最も多くの歌が収録されている。

また、「万葉集」の編纂にも、関わったとされる。

彼女は始め、穂積皇子の妻になり、穂積皇子の死去後は、

藤原不比等の四男の藤原麻呂と、一時は恋愛関係であったようである。

その後、彼とは別れたか。同族で異母兄の、大伴宿奈麻呂と再婚。

彼との間に、長女の大伴坂上大嬢、大伴坂上二嬢が生まれた。

 

 

 

藤原麻呂が贈った歌に答えた歌

 

「万葉集」巻第四 五二五 佐保河の小石ふみ渡りぬばたまの黒馬の来る夜は年にもあらぬか 

 

 

 意味 佐保河の小石を踏み渡って宵闇の中をあなたの黒馬の来る夜は、

年に一度でもあって欲しいものです。

 

 

 

麻呂は、大伴坂上郎女の許に通って来る時に、

黒馬に跨り、颯爽とやって来たようですね。

彼の貴公子振りが、窺えます。

 

 

 

 

五二六  千鳥鳴く佐保の河瀬のさざれ波止む時も無しわが恋

 

意味 千鳥が悲しげに鳴く佐保河の瀬の小波、そのように止む時も

ない我が恋心よ。

 

 

 

 

五二七  来むといふも来ぬ時あるを来じといふを来むとは待たじ来じといふものを

 

 

 

 

 

 五二八 千鳥鳴く佐保の河門の瀬を広み打橋渡す汝が来とおもへば

 

 

 

 

五六四 山菅の実成らぬ事をわれに依せ言はれし君は誰とか宿らむ

 

 

意味 山に生える菅は実が成らないと言いますが、所詮実らぬ関係なのに、人から私との恋を噂されたあなたは、今頃どこのどなたと寝ているのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六五七  思はじと言ひてしものを朱華色の変ひやすきわが心かも

 

 

 

意味 あのような人の事などもう思うまいと口に出して言っていたのに、

何と変わりやすいわが心なのか。

 

 

六五八 思へども験もなしと知るものをなにかここだくわが恋ひわたる

 

 

意味 あの人の事を思ってもかいがないとわかっていながら、

どうしてこんにも、私は恋い続けるのだろうか。

 

 

 

 

六五九 あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑやわが背子奥もいかにあらめ

 

 

 

 

六六〇 汝をと吾をと吾を人そ離くなるいで吾君人の中言聞きこすなゆめ

 

 

 

 

六六一 恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば

 

 

 

 

六八三 いふ言の恐き国ぞ紅の色にな出でそ思ひ死ぬとも

 

 

 

六八四 今は吾は死なむよわが背生けりともわれに寄るべしと言ふといはなくに

 

 

 

六八五 人言を繁みか君の二鞘の家を隔りて恋ひつつをらむ

 

 

六八六 このころは千歳や往きも過ぎぬるとわれやしか思ふ見まく欲りかも

 

 

 

六八七 愛しとわが思ふこころ速河の塞きに塞くともなほや崩たむ

 

 

六八八 青山を横切る雲の著ろくわれと咲まして人に知らゆな

 

 

六八九 海山も隔たらなくに何しかも目言をだにもここだ乏しき

 

 

 

「万葉集」巻八 夏の相聞 一四九八 暇無み来ざりし君にほととぎす

われかく恋ふと行きて告げこそ

 

 

 

一五〇〇 夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ