代表的な染料としては、紫草・藍・橡があった。
特に有名な紫草の紫草染めの場合は、乾燥させた紫根を
臼で引いて細かく砕く、もしくは湯を注ぎながら染汁を踏み出して
染液を作る。媒染剤として、灰汁を用いると紫色が鮮やかに出る。
赤系統の代表的なものは、紅染めである。
紅は、乾燥させた紅花を水に浸し、これに灰汁と酢を加え染液とする。
青色系統の代表的なものとしては、藍染めがある。
この山藍はすでに藍園での栽培も行なわれていた。
藍は二月頃に種蒔きをし、七月頃に刈り取る。
刈り取った藍を刻んで乾燥させ、床に寝かせ発酵させる。
これをスクモ藍と言う。更に臼でついて固め、藍玉にする。
これを水・灰汁と共に藍瓶に入れて自然発酵させて染液を作る。
染液に浸した生地は、最初は緑色に染まるが、
空気に曝すと藍が変化して青色に変化する。
黒色系統では、橡染めがあげられる。
これは主に、庶民の一般的な衣服の染料として使われていたようである。
橡はクヌギ類の総称で、その実(ドングリ)の煎汁で染める。
鉄媒染では黒色に、灰汁媒染では黄褐色に染まる。
このように、染料としては、専ら植物染料が中心に使われていたが、
中にはわずかではあるが、「埴」・「黄土」・「真朱」などの鉱物質のものも
用いられた。