「万葉集 巻第十一巻 二五七八 朝寝髪われは梳らじ愛しき君が
意味 朝の寝乱れ髪を、私は櫛でとかすまい。
愛しいあの方の手枕が触れた髪だから
恋人の男性と一夜を過ごし、夜明けを迎えた女性の吐息が聞こえてきそうな、艶かしく、そして女性の恋情がよく伝わってくる歌ですね。
愛しい男性と過ごした夜の余韻を、その恍惚感を、恋人が触れた自分の
黒髪の上に留めておきたいという、女性の気持ちが伝わってきます。
万葉集巻第十一巻 ぬばたまの妹が黒髪今夜もかわが無き床に靡けて
寝らむ
意味 真っ黒な妻の黒髪を今夜も、私のいない床に靡かせて寝ているの
だろうか
これは男性の方からの、一夜を過ごした女性への想いを表わしていますね。
これも、鮮やかなイメージを喚起する歌です。
万葉集巻第十一巻 二〇六〇 ぬばたまのわが黒髪を引きぬらし乱れてさらに恋ひわたるかも
意味 ぬばたまの私の黒髪を引きほどき、心乱れて一層恋し続ける事よ
この乱れた黒髪のように、自分の恋心も千々に乱れていますという、
この比喩、これも妖艶なイメージが漂う歌ですね。